コラム

2021/3/12

つくば市の弁護士が解説 ~離婚と年金分割~

離婚を考えはじめた方の多くは「年金分割」という言葉を聞くことがあると思います。
なんとなく年金が半分もらえる権利っぽいなと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
この機会に「年金分割」の制度の中身を学び、備えておくことは有益なことですので、解説致します。

【年金分割制度とは】
年金分割制度とは、離婚時や離婚後に夫婦の一方の厚生年金の支払い実績を分割し、配偶者の年金に対する期待をサポートする制度です。
これは「年金そのもの」を分け合うのではなく、あくまで「婚姻中に払い込んだ年金保険料の納付記録」を分け合う制度であり、対象は厚生年金のみであるという点に注意すべきです(年金を半分もらえると考えていた場合に期待を裏切られる場合があります。)。
例えば、夫婦の一方が専業主婦(夫)でもう一方が会社員という場合、厚生年金の支払い実績は会社員の方にしか蓄積されません。このような場合に年金分割をせずに離婚となれば、会社員の配偶者を支えてきた専業主婦(夫)の側の貢献が評価されていないこととなり、公平とはいえません。
婚姻中は夫婦が協力して家計を維持していると考えるべきことから、その期間中に払い込んだ年金保険料も分け合って将来年金を受け取るときの金額に反映するのが公平との見方から平成19年4月からこの年金制度の運用が開始されています。

【2種類の年金分割制度】
年金分割には「合意分割(離婚分割)」と「3号分割」の2種類があります。

合意分割(離婚分割)
合意分割(離婚分割)は、離婚する夫婦が合意または裁判手続きにより、保険料納付記録の按分割合「原則0.5(2分の1)」を決めることによって分割できるものです。
合意成立後、年金事務所に請求することにより分割することができます。

3号分割
3号分割は平成20年4月以降の婚姻期間に「3号被保険者」となっている配偶者において利用できる年金分割です。
「3号被保険者」とは、配偶者が厚生年金に加入していて、自身の年収が130万円未満で配偶者の扶養に入っている人を指します。
この3号分割は夫婦間の合意が不要で裁判もすることなく、3号被保険者の方が単独で年金分割の手続きができます。割合は合意分割と同じく0.5(2分の1)となります。
ただし、3号分割で適用されるのは「平成20年4月以降の婚姻期間」についてのみとなりますので、それ以前から婚姻している場合は、3号被保険者であっても合意分割が必要となります。

【年金分割請求の期限】
合意分割、3号分割共に請求期限がありますので注意が必要です。
どちらも「離婚後2年以内」に年金事務所で手続きを行う必要があります。
ただし、離婚後2年以内に裁判所へ年金分割調停を申立てた場合は、進行中に期限切れになる心配はありません。
なお、調停成立後(審判確定後)1か月以上経過してしまうと年金分割ができなくなってしまうので、手続きは早めに行うことが大切です。

【年金分割調停(審判)】
合意分割は、基本的にお互いが年金分割をすることと、年金分割割合に合意しないと成立しません。
話し合いでの合意が難しい場合は、年金分割調停の申立てや離婚調停の中で年金分割について話し合うことになります。
離婚時の年金分割については、「手続きが面倒」といった問題があるせいか、適用できる夫婦であっても請求しない方が多くみられます。
しかしながら、年金分割請求は正しく行えばほぼ確実に認められる権利であり、これによって将来あなたの受け取れる年金が月額数万円あるいはそれ以上増える可能性がある大切なものといえます。老後の生活の安心感を得るために多少面倒でもしっかり請求をしたいところです。
弁護士にご相談いただければ、煩雑なことをせずに年金を分割してもらうことも可能ですので、ご相談されることをおすすめいたします。

【まとめ】
年金分割の制度は詳細な中身をよくよく見ようとすると大変複雑なものに思えてしますと思いますので、ポイントだけ簡潔にまとめておきましょう。
①年金分割は婚姻期間中の厚生年金部分の支払い実績を夫婦間で均等にするための制度
②婚姻期間が長く配偶者の一方の厚生年金支払い実績が蓄積されている事案ほど、もらえる年金が多くなる。
③申立てをすればほとんどの場合年金分割は認められるので権利は行使すべき
④年金事務所で「年金分割情報通知書」を取得して弁護士に依頼すれば煩雑な手続き負担はない。
⑤権利行使はお早めに(離婚成立時から2年以内に行わないと権利が消滅します。)
令和3年3月12日

離婚問題のことならつくばの法律事務所 法律事務所つくばコムへお気軽にご相談ください。無料法律相談実施中です。

TOP